リヴァトン館

リヴァトン館

一週間以上かかって読んだ。つまらなかったわけではないんだけど中盤までなかなか乗れなかった。最初のほうは登場人物が説明なしに出てくるので(登場人物一覧表が付いているのに気がつかなかった私も間抜けなんだけど)、何度も元に戻って読んだということもあるかな。

現在98歳になったグレイスがリヴァトン館でメイドとして働いていた頃を振り返る。リヴァトン館で起こった悲劇の真相、グレイスの出生の秘密。そんな魅力的な謎を仄めかしつつ進んでいくストーリー。小さな伏線と華やかな貴族の暮らし、使用人の暮らし、リヴァトン館の魅力的なお嬢様たちの暮らしが描かれる。戦争の影がちらつき始め少女たちが大人になり物語が大きく動き出す。

全体に当時の様子やグレイスの心理が良く描かれていたけれど、冗長な感じはどうしてもするかな。あと登場人物もすべてに名前を持たせないでもっとすっきりシンプルにしてしまったほうが良かったような気がする。とくに現代のパートでは。お嬢様であるハンナとエメリンについては、グレイスからの視点であるということと事件へのかかわりという面からハンナが中心になるのはしょうがないけれど、エメリンの心理描写が少ないために最後の事件がやや唐突な感じがしてしまった。グレイスの出生の秘密の扱われ方もちょっと軽いよなぁ。

華やかな貴族の生活、使用人たちの様子、当時の芸術、事件の真相、現代のグレイスの周辺のこと、いろいろ盛り込み過ぎてそれぞれのエピソードが平板になってしまったように思える。

なんか文句ばかり書いているようだけど、貴族社会の描写もメイドたちの生き生きした様子も、とても素敵に描かれていたので十分楽しんだんだけどね。

引用メモ。

裏表のあるキャラクター。記憶は信用にならないこと、偏向した歴史としての性格を帯びること、謎と目に見えないもの、告白的な語り、伏線の張られたテクスト。こうしたことに関心をもち、ほかの作品も読みたいという読者のために、以下に例を示しておく。トマス・H・クック『緋色の記憶』、A・S・バイアット『抱擁』、マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』、モーラ・ジョス『夢の破片』、バーバラ・ヴァイン『死との抱擁』。