お菓子と麦酒 (角川文庫)

お菓子と麦酒 (角川文庫)

面白かった! 「お菓子と麦酒」「月と6ペンス」しゃれたタイトルに新潮文庫のグリーンの小粋な装丁のイメージから、いつか読んでみたいと思っていたモームの作品をやっと読むことができた。某所の読書会のおかげ。

最初のほうは話が進まないのでちょっとつらかったけど、後半は生き生きした筆致で面白くてどんどん読めた。物語の中の私を通してモームが語る文壇や批評家作家を取り巻く人々に向けるシニカルな視線、一人称でこの作品を書いたことへのちょっとした後悔、モーム自身が自由に楽しんで書いた気がする作品。

私が若い時に恋をするロウジーは女の私からすると魅力的には見えないんだけど、近寄りがたい美人じゃなくて可愛らしくて情に熱い、ある意味男の人の理想のような女性なのかなと思いつつ読んだ。 でもラストで子供にまつわるロウジーの中の秘めた悲しみと、一緒に逃げて添い遂げたジョージへの思いが描かれたことによって、モームが表現したかった人間の奥深さが少し理解できた気がした。

他の作品も読んでみたいなぁ。