風少女

 

風少女 (創元推理文庫)

風少女 (創元推理文庫)

さらさらと読める青春ミステリー。20年も前の作品だけど、古さを感じない。伊坂幸太郎の作品をもう少しあっさりとさせてハードボイルド風味にした感じ。今、伊坂幸太郎が新鮮さとともに受け入れられて愛されているということは、この作品が書かれた20年前にはこの作品は衝撃をもってミステリ界に受け止められたのではないだろうかと感じました。新しすぎるというか、早すぎたかも。
ミステリー部分だけを見るとちょっと物足りないという感じですが、青春ものとしてとてもよく出来ています。初恋の女性が不可解な亡くなり方をし、その真相を突き止めていくなかで、もやもやと心に残っていた初恋の残像のようなものが美しく昇華されていく。その過程がさわやかな筆致で描かれていて、とても好感を持ちました。亡くなった女性と主人公がもう少し魅力的に描かれていたらもっと良かったのにとも思いますが。
それにしても、初恋の人への想いというのはやっぱり特別なものなんですね。特に男の人はそうなのかな。私なんかはすっかり忘れてしまいましたけど。(笑)