白楼夢ー海峡植民地にて

1920年代、シンガポールが英国の植民地だった時代。英国人、中国人、マレー人、日本人、さまざまな勢力が入り乱れる街で、顔役として名を馳せていく一人の日本人、林田青年。林田青年は大物華僑の娘を殺害した容疑で警察と大物華僑の一族から追われることになる。


面白かった!!!初めて読む作家だし、舞台が1920年ごろのシンガポールということで、少しとっつきにくさを感じていたんだけれど、読み始めたらそれは杞憂に終わった。面白くてほとんど一気読み!


物語は現在大正9年9月現在、林田青年が大物華僑の娘を殺害した容疑で追われるところから始まる。最初に林田は犯人でないことが明示されているので、謎はなぜ犯人として追われることになったのか、林田を巡る策謀の真相にある。現在の状況と林田が顔役として名を馳せるまでの過去が交互に語られる。逃亡を続ける林田がどうなるのか、どんな策略がめぐらされているのか、その二本のラインを読者は同時に楽しめるのだ。おまけに大人の恋物語や母と子の間にある秘密などの魅力的なモチーフも描かれる。端役まできっちり描かれた登場人物たち、南方の熱気まで伝わってくるような描写、隅々まで気配りされたエンターティメントなのである。