ある初夏の朝。晴れわたった空。
やさしい日差しと爽やかな風がふくリビングで・・・
読む本じゃないわね、これは。(笑)

官能小説ほど難しいジャンルはないんじゃないかと思う。
だから、豪華な執筆陣が挑戦しているということで
かなり期待して読んだんだけれど、やっぱり官能小説の壁は厚かったという感じ。

官能小説をどう定義するかで印象も違うだろうけれど、
自慰補助(ヌケるってやつ)の役割を果たす直接的な描写があるものが多く、
それらは性描写に重点を置くためか小説としてのレベルが低い。
その手の描写をさほど重視しない読者にとっては退屈なものになってしまっている。

このアンソロジーの中では京極・皆川が
官能の意味を広く捉えて観念的・精神的なエロスを描いている。
それらの作品の方が小説としてもレベルが高く、
それでいて充分官能を感じさせるものになっていると思う。
中でも皆川博子の作品は秀逸。

これは好みの問題かもしれないけれど、
明らかに自慰補助の役割のために書かれる官能小説は別として、
文学作品として官能小説を書くのなら、
性描写がなくても官能を感じさせるものを書くべきなんじゃないかななどと思う。

それにしても「自慰補助」だの「官能」だの、
素で書いても恥ずかしくない年になっちゃったなぁ・・・、私。