偶然の祝福 (角川文庫)

偶然の祝福 (角川文庫)

久しぶりに小川洋子
まだ「博士の愛した数式」は積んである。
本屋大賞」に選ばれあちこちの書評サイトでも評価が高いのだけれど、それゆえになかなか読めないでいる。
私の中の小川洋子は「寡黙な死骸 みだらな弔い」や「まぶた」や「刺繍する少女」のイメージ。
冷たくてちょっと残酷で、だけどどこか懐かしい。
「どこか懐かしい」けれど「冷たくてちょっと残酷」ではないような気がする。
そういうのも嫌いじゃないけれど。


前置きはこのくらいにして、「偶然の祝福」。
孤独と悲しみの色が全編を覆っている。
孤独と悲しみが深々と降り積もった絶望の手前で、ささやかな偶然が「私」を守ってくれる。
それはよしもとばななの書く小説のような大きななにかではなくて、ほんの些細な偶然。
受け取ったと感じられるかどうかわからないくらいのささやかな祝福。
そのささやかさが心の一番奥を温めてくれる、これはそんな小説。

博士の愛した数式

博士の愛した数式

  
まぶた

まぶた

  
刺繍する少女 (角川文庫)

刺繍する少女 (角川文庫)


寡黙な死骸 みだらな弔い

寡黙な死骸 みだらな弔い


「寡黙な死骸みだらな弔い」は文庫になっているけれど、装丁と内容がすばらしくマッチしているのでこちらを紹介。
私の装丁買い癖の原点です。(笑)
文庫版はこちら。 asin:4122041783