熊の場所

熊の場所

結構いいじゃん、舞城!

以前「阿修羅ガール」を読んだときにはその魅力がさっぱりわからなかったのだけれど、
なんとなくわかった(ような気がする)。
流れるような文体、下品に書きなぐっているかのように見えて
実は文学的表現もさりげなく混じっていたりして。
ついでに主張はかなり熱い。
「なんだかんだ言っても愛だよ、愛!」とか「不条理な世界を認めて、自分を守るために戦え!」とか。
(ちがう?)

そんなことを読めば誰もが感じるだろうという風に書いた作品なのかな。
この作品は三島由紀夫賞候補だったらしいけど、はじめから賞狙いで書いたのかもしれない。
まぁ、これを読んでから「阿修羅ガール」を読めば、それなりに良い評価ができたような気がする。

個性的で流れるようなリズム感のある文体は、
何を書いても同じになりがちだと思うのだけれど、舞城は違う。
小学生も女子高生もヤンキーも書き分けられる。
そんな感じかな。

この作品では「熊の場所」がお気に入り。
嫌悪感ぎりぎりのところを登場人物が好奇心旺盛な普通っぽいこどもであるということで何とか乗り切って、
最後は陳腐さはあるものの、納得できない人はいないであろう結論に持っていく。
おさまるところにすっきりおさまった感じ。

何はともあれ、もうちょっと読んでみようかなと思う作家。
新刊も出たことだしね。