介護入門

介護入門

久しぶりのお風呂読書のために未読雑誌を探したら、「介護入門」が載った文芸春秋9月特別号が!
買ったまま積んでいたんだった。
「介護入門」を読む前についつい他の記事を読み込んでしまい、のぼせてしまう・・・。


マリファナをやりながら祖母の介護にいそしむ孫の愛と怒りに満ちた日々。
この一行がすべての小説。(いや、小説以前かも)

あまりにも真っ当な主張とひねりも何もないストレートすぎるストーリー。
それをかろうじて個性的に演出するのがラップ調文体なのだけれど、その使い方も中途半端。
時々思い出したように「YO、朋輩」と入るだけで、リズムもさほどない。
しかも主張してる部分はそれすらも忘れちゃってるのか、普通の文章になってしまっている。
舞城王太郎の超技巧文体なんかに比べると、もう隙だらけなのだ。


大体、主人公は何でマリファナやってるの?
必然性が感じられないんだけど。
あの文体にしたいがためにラリっている状況を作りたかったんだろうな、きっと。
それならそれで、もっとぶっ飛んでないと面白くないよ。


それでもたぶん著者が体験したのであろう、介護生活のひとつのパターン(あくまでもひとつのパターンでしかない)はまずまずリアリティがあるから読めなくはない。
婦人公論」に載る読者の手記よりはずっと良いけれど、語っている内容はそれと変わらない。
あくまでも個人的な介護体験だけ。


自らが体験した介護というテーマを離れたら、この人には何が書けるんだろう?
そのときが正念場だと思うんだけれど、作家としては潰しがきかなさそう。