コイノカオリ

コイノカオリ

角田光代, 島本理生, 栗田有起, 生田紗代, 宮下奈都, 井上荒野 。6人の作家が「コイノカオリ」を綴ったアンソロジー。以前読んだ「Teen Age」ほどではないにせよ、こちらもなかなか豪華な執筆陣。


角田光代「水曜日の恋人」
「コイノカオリ」に一番しっくり来る作品かな。母親の年下の恋人(だった人)にほのかな思いを抱く女の子。恋を知ることは孤独も知るということなんだ。


島本理生「最後の教室」
新しい島本理生の誕生かも。裏「東京タワー」だな、これ。20歳前後(もしかしたらいくつになってもかもしれないけど)の男の子にとって、年齢差というのはしばしば「恋をした」という現実よりも重いものなのかもしれない。しかも無自覚というか、生理的な部分で反応するんだから、若いって残酷よね。


栗田有起「泣きっつらにハニー」
すごくかわいいハートフルストーリー。繭子もチカちゃんもママもいいひと。困難な状況で一生懸命生きてる。そして人のことを思いやっている。私はあんまりいい人ばかり出てくる小説は好きじゃないんだけれど、これはなぜか許せるなぁ。ハチミツに癒されちゃったのかしら?


生田紗代「海の中には夜」
好きなのに彼と二人でいると逃げ出したくなる。なんとなくわかる気がする。好きすぎて、とか、照れくさいから、なんて理由じゃない。好きなのに苦手。そういうことってあるよね。実は私もオットのこと苦手だったんだもん。好きなのに、おかしいよね。


宮下奈都「日をつなぐ」
2004年に初めて文学界に登場したばかりの新人作家。これは2作目なのかな?でもこのアンソロジーの中ではこの作品が一番好き。静かで味わいのある文章。余韻の残るラスト。いいなぁ。「日をつなぐ」というタイトルも秀逸。もっとこの人の作品を読みたいなぁ。それにしてもこの先二人はどうなるんだろう。幸せであることを祈らずにはいられない。


井上荒野「犬と椎茸」
この作品だけがなんだか現実のくすんだ色をしている。大人のこじれた恋愛。上手いからこそ嫌悪感も抱くんだろうけど好きじゃないなぁ。自分の意思を主張できないくせに過去の出来事を根に持つタイプの主人公。ラストは希望が感じられるんだけど、嫌悪感のほうが強くてダメでした。