ツ、イ、ラ、ク

ツ、イ、ラ、ク

いたるところで絶賛されていた「ツ、イ、ラ、ク」をやっと読了。絶賛されているのが良くわかる。リアルでエロくて切ない。ただ一言すごい!これは今年のBEST5に入りそう。

14歳の隼子と国語の教師である河村の恋。秘密の恋は突然に始まりどんどん深くなっていく。といっても、二人の恋に焦点があたっている部分は以外に少ない。隼子の小学生時代からストーリーは始まり、その交友関係がとても詳しく描かれるからだ。その友人達や小中学時代の狭く濃密な人間関係が生々しい。このくらいの年齢の男と女の精神年齢の差も呆れるほどリアル。小中学生時代を経験した人なら、なにかひとつはその当時のエピソードを思い浮かべるのではないだろうか。もちろん私も記憶の奥底に眠っていたちょっと気恥ずかしくなるようなエピソードを思い出した。

そして二人の恋は中学時代のちょっとしたきっかけから始まるのだけれど、これがまためちゃくちゃ濃厚。中学生の恋なら淡い初恋を描くのが定番じゃないかと思うのだけれど、これはそんなごまかしは一切ない。隼子の友人達のプラトニックな付き合いの中にも色濃い感情が描かれる。女は幼いころから女として生きている。隼子と河村の恋愛はその中でもひときわ色濃く深く描かれている。まさしく恋に「ツイラク」したのだ。

リアルでエロくて切ない恋愛小説だけれども、姫野カオルコ色は全編を通して健在。教養を試すような数式やネタが随所にちりばめられているし、ときには飛ばしすぎと思えるほどの茶々が入る。そういった記述がある度にのめりこみかけていた恋愛小説から引き剥がされるのに、読み終わってみればまさしく王道の恋愛小説を読んだ気分になっているのだから、不思議なものである。

この小説が直木賞を取れなかったのは、「読むのが怖い! 2000年代のエンタメ本200冊徹底ガイド」で語られているように、「14歳にさせたから」としか考えられないね・・・。