石油ポンプの女

石油ポンプの女

大書評芸」を読んで、読みたくなった談四楼氏の短篇小説を読んでみた。これがとっても良かったのだ!
登場人物はすべて昭和45年に入門した売れない落語家達。大阪万博が開催され、三島が割腹自殺を図った年。戦後の終わりともとれる時代についていくのがやっとの落語家達の悲喜こもごも。
どの登場人物も人間味にあふれている。落語に対する情熱があっても生活という現実を前にして戸惑う人、目先の欲に落語への思いを忘れそうになってしまう人、割り切ろう、合理的に行こうと思いながらも自分の感情に振り回される人。そんなどこにでもいる人たちが生き生きと描かれている。文章のリズムも良く、読み出すと昭和45年の落語界にすっと引き込まれるよう。
だた、私の不勉強で落語用語がイマイチわからなかったのが残念。もちろんわからなくても物語りの世界に入り込むことに何の不都合もないんですが。