M (文春文庫)

M (文春文庫)

「エロスと狂気の臨界点」を書いた短編集らしいです。
うーん・・・。エロくないけど?性描写はいっぱいあるんだけど、全然エロくない。質感がない。「頭で考えて書きました」的な描写で読んでいると疲れる。狂気についても同じで、精神の糸が張り詰めて張り詰めて細くなってキリキリと音を立てるような状態を「頭で考えて書きました」という感じ。それも全編。
もちろん小説は作家が頭で考えて書くのだけれど、その感じを読者に悟られてしまったらダメだと思う。テクニックだけで心がこもっていないエッチと同じだ。伝わっちゃうんだよね、そういうことって。


初めて馳星周を読んだのは東京から神戸に帰る新幹線の中だった。その頃の私は1年に10冊の本を読むか読まないかで、決して本好きとはいえなかったのだけれど、そのときの連れが新幹線に乗る前に本を買ったので、私も付き合いでなんとなく映画化のために平積みになっていたやや厚めの文庫本を買った。それが馳星周のデビュー作「不夜城 (角川文庫)」。車内では友達の呼びかけも聞こえないくらいに熱中して読んだ。読み終わって新幹線から降りたときには私の頭の中はハードボイルドだった。新宿歌舞伎町で魑魅魍魎と頭脳戦を繰る広げるせいこ(笑)。その顔を見た友達が「せいこ、具合でも悪いの?顔がちょと怖いんだけど・・・」というほど私の顔は怖かったらしい。
思い起こせばそれが私が本にハマるきっかけだったのかもしれない。あのころのがむしゃらな感じ、取り戻して欲しいなぁ。