錆びる心 (文春文庫)

錆びる心 (文春文庫)

もう既に夏バテ気味なのか、ちっとも読書がはかどらず。ちょっと手をつけて放り出している本がざっと10冊。集中力が全くありませーん。そんな状態でもどんどん読み進められたのが、そう、やっぱり桐野夏生

これは6作入った短編集桐野夏生短編ははじめて読んだ。桐野夏生長編作家だと思っていたのはどうやら間違いで、短篇の名手でもあったらしい。6作とも手間ひまかけて作られた味わい深い小説だ。一番のお気に入りは「虫卵の配列」。生物学の印象的なエピソードが鼓動悪具として使い小川洋子の幻想的な世界を思い起こさせつつも結末は桐野夏生。この個性はなんだろう。この短編集に出てくる人物に誰一人似通った人は居らずストーリーの運びもバラエティに富んでいるのに、読めばそこには桐野夏生がくっきり浮かび上がる。見事としか言いようがない。

文庫の解説が中条省平なのもちょっと嬉しい。この人の文章はいつも知的に洗練されている。