語り手の事情

語り手の事情

あー、面白かった!どうしても佐藤賢一とごっちゃになりがちな酒見賢一(あくまでもあたしの中でね)を初読み。中国ものの多い著者だけど、こちらはヴィクトリア朝を舞台にした物語。ぶっちゃけ舞台はどこでもいいというかなんというか。非常に説明のしにくい小説なので、あえて説明しません(手抜き)。
単行本の装丁を見てもわかるように中に出てくる単語というかキーワードは童貞喪失、女装、性奴隷にSM、そして妄想と力とまぁエロ小説のようなのですが、語り手が場所にふさわしい語り口を選ぶので、いやらしさより人間という存在のおかしみを感じてしまうほど。そして、この語り手という存在が突き抜けていて、すごく面白い。だからといってアイデアひとつで勝負というわけではなく、とても完成度の高い作品なのです。久しぶりに読書の愉しみに浸ることが出来たような気さえしてしまいます。
また他の作品も読んでみたい。でも中国物はとにかく固有名詞が覚えられないんだよなぁ。歴史にも疎いし・・・って、それは中国に関してだけではないか・・・orz。