お腹召しませ

お腹召しませ

ベタだのあざといだのうそくさいだのなんだかんだ言っても、やっぱり浅田次郎は上手いなと思う。説明臭さはないのに、この時代の歴史に疎い私のような読者が読んでもストーリーの中にすっと入っていけるし、短篇の中でもきっちり人物造型が出来ていてとても読みやすい。
6篇の短篇、どれも語り部は現代を生きる人。その人から幕末〜明治維新を生きた侍に繋げてストーリーを作っている。その語り部の人生と侍の人生が繋がり、いつの時代も人間というのは馬鹿で不器用で合理的になり切れない生き物だと思う。馬鹿で不器用な生きかたを読んでいる内になんとなく、そんな人間てのもなかなか素敵じゃないか、なんて、妙にすがすがしい気持ちになっているのだ。