ページをめくれば

ページをめくれば (奇想コレクション)

ページをめくれば (奇想コレクション)

人工衛星の打ち上げに沸く時代、発展にとり残された小さな学校にひとりの男の子が転校してきた…本邦初訳の「ピープル」シリーズ「忘れられないこと」をはじめ、デビュー作「おいで、ワゴン!」、異星人との交流を描いたハート・ウォーミングな物語「いちばん近い学校」、過去が見える眼をもつ女性がみた世界「鏡にて見るごとく―おぼろげに」他、全11篇を収録。

普段SFはまったく読まない私の勝手なイメージだけれども、SFのイメージと女性や子供はなんとなく結びつかない。そこが普段SFを手に取らない理由にもなっているのだけれど、この短編集は全編を通して女性と子供の目を通して書かれているので、とても読みやすかった。「忘れられないこと」や「いちばん近い学校」「小委員会」などのファーストコンタクトものでは、驚き戸惑いながらも、結局、生活レベルでその存在を受け入れているところはとても女性らしい反応だと思うし、「小委員会」「信じる子」「おいで、ワゴン!」では、子供のときしか持ち得ない性質をとてもよく表していると思った。異性人の姿がなんとなく愛らしいのも(「いちばん近い学校」のヴァニーの可愛さったら、もう!)、女性にとってはたまらない。
それにしても、ハートウォーミングな話ばかりかと思っていたらホラーやミステリーの要素のあるものも含まれていて油断ならない。(「しーっ!」の音喰いの恐ろしさったら、もう!)一冊で何種類もの味が楽しめるお得な一冊。