幻詩狩り

 

幻詩狩り (C・novels)

幻詩狩り (C・novels)

SFをほとんど読んだことがない私。当然創元社SF文庫を手に取るのも初めて。そんなSF超初心者でも一気読みしてしまうほど引き込まれる小説。サスペンス、ホラー、歴史物、SFなどの要素が詰まっていて、「幻詩」と呼ばれる麻薬のような効果のある言葉を狩るというストーリー。言葉の素晴らしさ、恐ろしさを良く知っている読書人なら興味を惹かれるに違いない。そしてその期待に充分答えられる内容の小説なのだ。驚き。

導入部は現代サスペンス風。そこからぐっと物語りに惹きつけられる。何を追っているのか、「時の黄金」とは?続きが知りたくて逸る気持ちで読んでいたら、第一章で突然1940年代のパリに飛ぶ。そこではシュルレアリズム運動のボス、アンドレ・ブルトンを中心に謎の天才詩人が絡んでくる。そして2章でその天才詩人フー・メイによって「時の黄金」という詩が生み出される。その詩には不吉な何かが隠されている。そういう不穏な空気が流れている。この辺りはホラーのよう。そして3章では数十年後の日本でパンドラの箱がとうとう開けられる。最終章ではその詩の謎が明かされるのだ。結末は全く予測できず、ただただ驚いた。

最初から最後まで隙なく面白い。傑作。