若者殺しの時代

若者殺しの時代 (講談社現代新書)

若者殺しの時代 (講談社現代新書)

クリスマスが恋人たちのものになったのは1983年からだ。そしてそれは同時に、若者から金をまきあげようと、日本の社会が動きだす時期でもある。「若者」というカテゴリーを社会が認め、そこに資本を投じ、その資本を回収するために「若者はこうすべきだ」という情報を流し、若い人の行動を誘導しはじめる時期なのである。若い人たちにとって、大きな曲がり角が1983年にあった―80年代に謎あり!ずんずん調べてつきとめた。

現在が、若者を飼い殺しにしている時代だというようなことは良く言われているけれど、どのような経過でそのような時代になったのか、どの時代に分岐点があったのか。そういうことを堀井氏流の調査で明らかにしたのが本書。とはいうものの、内容はややお粗末。その原因があるとされる、80年代を中心に振り返るだけの内容になってしまっている。80年代の振り返り方も堀井氏からみた80年代といった感じでやや客観性に欠けている気がする。
そして何より、「若者殺しの時代」というタイトルであるのに、現在の若者が置かれている状況は何も具体的に示されていないのが弱い。若者の視点はすっかりさっぱり抜けている。
著者は1958年生まれ。なんだかんだいいつつ80年代はさぞかし楽しかったんだろう。楽しかった思い出で若者に迎合したような本をちゃっかり出して、しかも結論は「沈んでいく社会から何とか逃げろ。なんとかうまくやってくれ。」なにそれ?ずるい。著者の中ではすでに「若者」はすっかり殺されているんだ。

部分的には面白いところがたくさんあるから、無理にこういう社会学的な世代論みたいにしなきゃいいのに。もともとこれは週間文春の「ホリイのずんずん調査」からのピックアップだったらしい。軽めの内容を「新書」という形に無理やり当てはめたのかな。そうだとすると、読者を馬鹿にしてるよ。週間ブックレビューでこの本を紹介していた武田徹さんが「本殺しの時代でもあるのかな」といっていたのが印象に残ってる。本当にそのとおりだ。