感光生活

感光生活

感光生活

どこでだったか、石田衣良が薦めていたのを読んでから気になっていた本。確かそのときは「恋をしたとき、周りの風景がとても瑞々しく輝いて見えるときがあるでしょう?そういう輝きを文章にしたような本」というようなことを言っていた。読んでみたら、そういう部分もあるけど、ちょっと違ったイメージだった。でも、とっても気に入った。

これはエッセイなの?それとも小説小説なのかと思って読み始めると、著者と思しき「コイケさん」が登場する。あぁ、エッセイなんだと思ったら、なんだか現実が奇妙な方向に歪みはじめて、なんだか不思議な心持になって、ちょっと戸惑っているうちに一篇が終わる。その繰り返し。こんな人は現実にはいないよ、こんな出来事は実際には起こらないよ。そうは思うのだけれど、日常のちょっとした出来事、心をふと横切る、言葉にならないような気持ちが唐突なくらいに瑞々しく表現されているから、もしかしたら小池昌代という詩人の目には日常がこんな風に見えるのかもしれない、などと思うようになった。全体的にはやさしく淡い光が当たってやさしく淡いちょっとゆがんだ影がうつる。あぁ、そうか、だから「感光生活」なのか。
初期の川上弘美の雰囲気もあるけど、作為的なところがあまりなくて、でも言葉は選び抜かれてて。とっても良かった。