チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光

東城大学医学部付属病院は、米国の心臓専門病院から心臓移植の権威、桐生恭一を臓器制御外科助教授として招聘した。彼が構築した外科チームは、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門の、通称“チーム・バチスタ”として、成功率100%を誇り、その勇名を轟かせている。ところが、3例立て続けに術中死が発生。原因不明の術中死と、メディアの注目を集める手術が重なる事態に危機感を抱いた病院長・高階は、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口公平に内部調査を依頼しようと動いていた。壊滅寸前の大学病院の現状。医療現場の危機的状況。そしてチーム・バチスタ・メンバーの相克と因縁。医療過誤か、殺人か。遺体は何を語るのか…。栄光のチーム・バチスタの裏側に隠されたもう一つの顔とは。第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。

ひねくれものなので評判のいいベストセラーはあまり読まないほうだけど、これは読んで正解！いやー、面白かった！たまには素直になってみるもんだ！？

それにしても、これがデビュー作というのはすごいと思う。医学用語が多いのと文章表現がちょっと大仰なところがあるけれども、筆力は高くて一気に読まされる。リアルに描かれた大学病院の周辺事情と作りこまれた表情豊かなキャラクターが違和感なくマッチしているし、医療にまつわる問題も上手く取り入れつつ、エンタメに徹しているところも好感が持てる。ちょっと変化が欲しいなと思う中盤に「白鳥」という強力なキャラクターが登場するのも上手い。終盤の大団円も気持ち良くて好き。

ただ、ミステリーとしてはちょっと弱いかな。犯行に使われた部分の避け方がわりにあからさまな気がするし、犯行の手口にひねりがないから、謎解きとしては初級という感じ。あと、犯人のキャラクターがいかにも犯人なので、意外性に欠けるかなぁ。動機というか、犯行にいたる心理はすっごくわかるんだけど。

でも、かなり満足。続編が読みたくなるよね、これは。