殺人現場を歩く

殺人現場を歩く (ちくま文庫)

殺人現場を歩く (ちくま文庫)

題名どおりの本。猟奇事件のノンフィクションや雑誌の記事をたくさん読んでいるくせに、殺人現場を見に行くなんて野次馬根性丸出しのみっともない行動だと思っていた。でも、この本が殺人事件にかかわる当事者の内面に分け入っていくわけではなく、事実と写真のみ、そして場所から受ける印象だけを語っているのを見ていくと、私のほうがずっと低俗だなと思った。人が殺されたり捨てられたりした場所はなんとなく、そこだけ時間が止まったような、日常に戻り事件が風化するのを拒むような雰囲気を醸しだしている。それでもゆっくりとその風景は日常に同化していくのだけれど。