語り女たち

語り女たち

アラビアンナイトの王に倣って、語り女達を募った空想癖のある男。
日々女達から語られる不思議な物語17編。
夜の闇にぽっかり浮かんでいるような気分にさせられるファンタスティックな短編集。

語り女たちが語る物語はほんわかするものからホラーめいたものまで
バラエティに富んでいる。
中にはあまり面白くない話もあるのだけれど、実際に語り女たちに話を聞いたら
それぞれの語る物語の持つ空気が違うのは当然だし、
それが語り女たちの個性にもなっていて全体としては面白かった。
一つの物語が終わると「次はどんな人がどんなできごとを語るのか」とわくわくする。
そうしていつのまにかこの空想癖のある男と不思議な体験をともにしているのだ。
読み終ったあと、もっと語り女たちの物語を聞いていたい気分になる。

装丁は「はてしない物語」みたいでとても素敵。
しばし現実を忘れてしまえる、なかなか贅沢な一冊だ。