嫉妬

嫉妬

「嫉妬」と「事件」の2編。
2編とも、著者(私)が「私」の内的体験を描いている。

特に「嫉妬」は自分から別れを告げた年下の彼が
他の女性と暮らし始めたことから始まる嫉妬の一部始終を書いている。
それだけ個人的な感情を書いているのだけれど、全く感情的ではない。
冷静というのとも客観的というのともちょっと違う。
その当時を自ら追体験しているにもかかわらず、
書かれたものはただそのときそこにあった真実でしかない。
書かれた真実はもはや著者のものではなくなり、
読者や大勢の女性達の根底にある「嫉妬」という感情を表したものになっている。

こういうのを本当の私小説というのかな。
初めて味わう感覚。
かなり重い気分になるけれど。