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- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/06/27
- メディア: 単行本
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オンナの差別意識・目に見えない階級制度・妬み・嫉み・悪意
あらゆる負の感情が渦巻いている。
特にこの物語の語り手の「わたし」の醸しだす雰囲気の不気味なこと。
よくここまで悪意の迸った人間像を書けるなぁ、桐野夏生というひとは。
「わたし」「ユリコ」「和恵」3人の生き方が描かれるけれども、
特に「和恵」の生き方はすさまじく、心理描写がものすごくリアル。
自分が何を欲しているかもわからないままひたすら努力を重ね、
それでも人生のレースから脱落し、娼婦として死んでいかざるをえなかった女。
読んでいるととてもその生き方を馬鹿だとか不器用だなどと
評価しようなどという気持ちにはなれない。
ただただ、痛々しくて辛くて悲しい。
女の世界は複雑だ。
女が上手く世の中をわたっていくにはどうすればいいのだろう。
美貌や才能、名声、金、何もかも、女であるという概念の前では無力なのに。
と、ここまで書いて、これはフィクションだったのだなと気づく。
そのくらいのめり込んでしまう、ものすごいリアリティ。
脱帽です、桐野さん。