東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

これいつから読み始めたんだっけ?2週間はかかってるぞ。もちろん毎日こつこつ読んでいたわけじゃない。好きじゃない本を読んでいると、読書に対するモチベーションがどんどん下がっていってしまうので、本を手にとる時間自体が減ってしまうのだ。私はこの本、好きじゃない。


長編」と銘打ってあるので小説だと思って読み始めたんだけど、これはリリー・フランキーの自伝なのね。リリーさんのオカンへの手紙といったほうがいいのかもしれない。そこんとこ認識してなかったので読み始めてからなにやら違和感が・・・。私はリリー・フランキーという人物のことを良く知らないし(子どもがらみで「おでんくん」の作者だということくらいしか知らない)、興味もない。だからそんな人の自伝なんか読みたくない。それがまた彼のオカンへのラブレターとでもいうべきこっぱずかしい内容ならなおさらだ。


ま、それでもせっかく借りたんだからと一生懸命読んだんだけど、やっぱりダメだった。母親というものは大抵、子どものことを愛しているし子どものためならえんやこらさ、なのだ。子どもがそのことに気付くのは大人になってからで親孝行したいときには親は亡く、というのも世の常なのだ。だからこそ、みんなこの作品を読んで共感し泣くのだろうけど、私の目からは涙は一滴もこぼれなかった。それはリリーさんという人のだらしなさや身勝手さが鼻についたということもあるし、オカンやオトンとのエピソードのあいだにはさまれる説教めいた言葉達に違和感を感じ、いらだったということもある。自己憐憫に浸っているようなこの長編自体が不快だったということもある。


そして、それ以上に私はもう子供の視点では物事をみられないということが大きいのだと思う。私の母は健在だけれど、私ももう母親。子供目線より母親目線なんだよね。母親の視点でこの長編を読むとかなり物足りない。オカンとオトンとの微妙な夫婦関係や兄弟達との関係は掘り下げられていないし、オカンがやっていることも母親としては十分理解できるから、思わず泣いてしまうような事はなかった。もちろん、リリーさんのオカンは明るく逞しく働き者の素晴らしい人だと思うけれども。


文句をつけたけれども面白くないわけではないので、リリー・フランキーという人に関心がある人、子供の視線で親を見ることの出来る人、普段それほど本を読まないけど何か読んでみようかなって人にはお薦めかもしれません。