12人の作家が描く12対の短編小説
ひとつのストーリーを別主人公の視点で綴るという試みはとても面白いと思う。ひとつの出来事にもいろんな見方があるのだということはわかっていても、なかなか発想の転換や想像ができないもの。作家という人はすごいなぁと子供のように驚いてしまう。

この中では佐藤正午小川洋子堀江敏幸三浦しをんが好きかな。
中でも佐藤正午の作品の主人公同士の距離が好き。「袖すりあうも他生の縁」という程度の距離。そんなところにも物語が出来ちゃうというのがとてもいい。小川洋子堀江敏幸は独自の世界を確立しているし(電話アーティストなんて小川洋子しか思いつかないでしょうし、黒電話の音や風景の描写にすら温かみと独特の空気を感じさせるのは堀江敏幸の文章の特徴だと思う)、三浦しをんのストーリーはとてもキュートだ。