ある秘密 (新潮クレスト・ブックス)

ある秘密 (新潮クレスト・ブックス)

ある家族の「ある秘密」。自伝的小説であるらしい。
物語の最初から少しづつ秘密の断片が見えてくる。その断片を追いかけるように読み進めて行くと戦争と絡んだ複雑な家族の歴史が紐解かれていく。余分なものがすべて殺ぎ落とされ抑制の効いた洗練された文章と物語が、この家族が抱えざるを得なかった「ある秘密」の重みを引き立てている。自分の生命が、忌むべきあの戦争なくしては成り立たなかったという、矛盾にみちた現実を受け止め昇華する作者の姿に静かな感動を覚えた・・・なんて書くと、なんか安っぽいな。感想を書くのは難しい。上手く伝えられないけど、とてもいい本です。でもエピローグは蛇足のような気がしますが。もちろんそれを補って余りある魅力がある本です。