対岸の彼女 

対岸の彼女

対岸の彼女

30代、既婚、子持ちの「勝ち犬」小夜子と、独身、子なしの「負け犬」葵。立場が違うということは、時に女同士を決裂させる。女の人を区別するのは、女の人だ。性格も生活環境も全く違う2人の女性の友情は成立するのか…?

この紹介文のような内容じゃない気がするんだけどなぁ、この小説。立場の違う女性の友情を通して、人はなぜ年を重ねるのか、何のために生きていくのか、ということに真っ向から向き合った角田光代が出した答えのような気がする。その答えはそれぞれ読んでいただくとして。

とても上手く書かれた小説だと思う。小夜子の現在(大人になった葵とかかわっていく経過)と葵の高校生時代のある出来事についてとが、交互に語られていく。そのどちらにもぐいぐい引き込まれる。小夜子の心理については、子供を持つ主婦として一度くらいは心に抱いたことばかりで共感するし、高校時代の人間関係がすべてのような閉塞感もとてもよくわかる。とにかくうまく書かれた小説だと思う。
それでもどこか入り込めない部分があって、それは何なのかなと考えると、上手すぎるということなんだと思う。たぶん直木賞を狙ったんだろうなと思わせる(実際取ったのはすごいですが)テクニックを駆使した上で投げられた直球みたいな優等生小説という感じ。角田光代小説は、どうしようもないのになぜか許せてしまう人物と嫌悪感と紙一重なのに読ませてしまう物語という、なにやら不思議な魅力を持っていたはずで。その角田光代の味ともいえる部分がほとんどない。正直、こういう小説なら角ちゃんが書かなくてもなぁ・・・と思えてしまうのだ