僕らの事情。

僕らの事情。

僕らの事情。

十五歳の少年ネイサンが語る、親友サイモンとの日々。筋ジストロフィーという病気で車椅子生活を送るサイモンは、強い個性とユーモアでクラスの人気者。しかし、サイモンの病気は死にいたる病。次第に衰えていく親友に対し、さまざまな思いが交錯し戸惑うネイサン。そんなネイサンも、考えなければならない問題や悩みを抱えていた。何があろうと人生はつづいていく。どんなに悲しいことがあっても、生きることはすばらしい。ニュージーランド発の青春小説

週間ブックレビューで中江有里さんが紹介していた本。

うん、とっても良かった。じんわりと心に沁みてくる作品だった。ネイサンとサイモンの友情の物語。RPGや女の子に夢中で馬鹿話をする。そんな付き合い。サイモンは筋ジストロフィーという死にいたる病を抱えているけれど、ネイサンは同情しない。必要以上にやさしくしない。ネイサンにとってサイモンは「とてもいいやつ」だから親友なのだ。「病気で体が不自由でもうすぐ死んでしまう特別かわいそうなやつ」じゃない。でもそれはサイモンの病気や死にいたる予後に気づかないようにしているのではない。サイモンもネイサンもこの病気にちゃんと向き合っている。そしてそこでできる限りのことをやっているのだ。

障害や難病を持った人と接したことがある人なら同情も特別な優しさも持たずに接するということの難しさを感じたことがあると思う。この物語でのネイサンのサイモンに対する接し方はひとつの理想だという気がする。だからこそ、大人たちからネイサンは「すてきな子」と賞されるのだ。私の子供たちも「すてきな子」であってほしい。それには私自身がすてきな大人でなければならないのだなと思った。

こんな風に書くとどんないい子ぶった感動物語なのかと思ってしまうけれど、人間が抱えてしまう矛盾した感情や泥臭さといったようなものもちゃんと描かれている。「人は喜びと悲しみを同時に感じることができる」ということも。
読んでいる最中、「こんな夜更けにバナナかよ」を思い出した。「こんな夜更けに〜」はノンフィクションでもっと生々しいけれど、鹿野さんとサイモンがちょっとダブった。二人とも本当のノーマライゼーションを求めていたところが似ているのかな。「こんな夜更けに〜」の感想はこちら