ポピュラーサイエンスの時代

ポピュラーサイエンスの時代―20世紀の暮らしと科学

ポピュラーサイエンスの時代―20世紀の暮らしと科学

電動歯ブラシ、体温計、トランジスタラジオ…。誰もがお世話になった「新発明」で時代を読む。20世紀に登場したテクノロジー、そこから生まれた日用品や都市型施設を扱った科学雑誌や新聞記事などの文化現象を取りあげ解説。

久しぶりの読了本。これも週間ブックレビューで紹介されていたもの。

私たちは科学とは切っても切れない関係にあるはずなのだけれど、実際のところ正確な科学知識は意外に持っていないものだ。私たちが科学を元にした「新発明」にお世話になるきっかけは「あいまいな科学イメージ」であることが多い。このあいまいな科学イメージを著者は「ポピュラーサイエンス」と呼ぶ。20世紀はまさにこのポピュラーサイエンスの時代でさまざまな「新発明」がなされ商品となり私たちの生活に入ってくる。電動歯ブラシティッシュペーパー、体温計、トースター、食器洗い機、キオスク、プリクラ、サイレン、トランジスタラジオなどなど。その過程を解説している、興味深い本。科学雑誌からの図版も多くて読みやすく面白い。

もちろん本題の部分も面白いのだけれど、小説や映画などを絡めた語り口がとても個性的でいい。「電動歯ブラシ」では谷崎潤一郎は白い歯を嫌悪していたというエピソードが出てくる。「西洋便所のタイル張りの床を想い出す」とまで言っているらしい。こういった文化人のちょっとしたエピソードや映画のワンシーンがその当時の価値観をあぶりだすのに一役買っているのだ。