カルトの子

カルトの子―心を盗まれた家族 (文春文庫)

カルトの子―心を盗まれた家族 (文春文庫)

平凡な家庭にカルト宗教が入り込んだ時、子どもはどんな影響を受けるのだろうか。親からの愛情や関心を奪われ、集団の中で精神的、身体的虐待を受けて心に深い傷を負った子どもたち。本書は、カルトの子が初めて自分の言葉で語った壮絶な記録であり、宗教に関わりなく現代の子育ての闇に迫るルポルタージュである。

オウム真理教エホバの証人統一教会ヤマギシ会の4つのカルト教団に取り込まれてしまった子どもたちがそこでどのような扱いを受けているのか。そこから外の世界に出たとき、彼らの心身にはどのようなことが起こるのかを追ったノンフィクション
自らの意思でなく、親の思想に取り込まれ教団の門をくぐる子どもたち。そこでは親兄弟と分離され体罰が行われる場合もある。そして一般社会を悪と教えられ係わり合いを持たずに生きていくことを強要される。それは想像を絶する非現実的な状況なのだろうと誰もが思うけれど、このノンフィクションを読んでいくと、決してそうではないのかもしれないと思うようになっていく。それが宗教の名の下において行われていなくても、親は子どもと子どもを取り囲む社会の平和を願い、大人の価値観で子どもに物事を教えていくのだ。その価値観が誤りで子どもの幸せに繋がらないことであると、誰が疑ったりするだろう?

日本では「虐待」と訳された「child abuse」は直訳すれば「不適切な子どもの扱い方」となる。子どもを自分の思い通りに育てたい。カルトの親は「一族と世界の平和のためカルトの教えを守ることを教える」、そうでない親は「頭がよくて、思いやりがあり、たくましく、集団遊びが出来て、本が読め、音楽や絵画など芸術に親しむ子になって欲しいと早期教育をする」。それは両方とも子どもの幸せを願ってのことだけれど、こんな子どもになって欲しいと思うのは親の欲求だということを忘れてはいけない。子どもと親の関係は本来、子どもの欲求に親が答えるのが基本となっているにもかかわらず、親の欲求実現をを子どもに求めている。それは親子関係の逆転であり、「不適切な子どもの扱い方」であり、「child abuse」そのものなのだ。