文芸時評という感想

文芸時評という感想

文芸時評という感想

足掛け12年分の文芸時評。前半は知らない作家の知らない作品ばかりだったにもかかわらず、どこから読んでも楽しめる本だった。荒川さんの書評はとても読みやすくわかりやすい。難しい文章を書く批評家が作品のことを深く理解しているのかというとそんなことはないんだなぁ、という当たり前のことに気がついた。
そして、いつも読者の側にいる書評だ。だけど読者を甘やかすわけではなくて、読者も作家も文学というものに真摯に向き合って欲しいという願いが込められているように感じた。読みたい本はもちろん増えたけど、心に残っているのは荒川さんの言葉だ。手元において時々読み返したい。けど、お値段がなぁ・・・。
町田康への評価がかなり高い。保坂和志はお気に召さないようだ。どちらもこれから読んでいきたいと思う作家さんだけど。島本理生への評価もなかなか良い。「リトル・バイ・リトル」「生まれる森」への評価なんだけど。エンタメ方向に進んだように思える「ナラタージュ」への評価も知りたかったな。
多田尋子さんの「焚火」という作品(「体温」という短編集に入っていて、今は絶版のよう)と岩坂恵子さんの「掘るひと」は読んでみるつもり。