死因究明
- 作者: 柳原三佳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/09
- メディア: 単行本
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解剖もされず「死因」も「命日」もはっきりしないまま長い年月苦しみ続けている遺族、事件の「被害者」でありながら、事実すら認められない…。解剖を怠り、人の死をないがしろにする警察・司法当局のずさんな実態を告発する。
なんと感想を書いていいのかわかりません。
日本の検視や解剖の制度はこんなにお寒い状況だったのかと。驚愕の事実。監察医制度が東京23区内と他いくつかの市(県じゃなくて!)にしかないということは上野正彦さんの著書で知っていたけど、その監察医制度さえまともに機能していないとは!
この本に出てくる「木村事件」は以前にTVでみて知っていたけど、結局、裁判で事件性がないとされたままで、傷害事件と認められたとしても時効を迎えてしまったそうだ。事故で死んだとされた最愛の息子の死の状況がどうみても警察の説明と異なる。もしかしたら、殺され、事故を装って捨てられたかもしれない。なのに、司法解剖もされずいい加減な検視のみで荼毘に付されてしまったために、状況証拠しかなく、警察からも法的機関からもそっぽを向かれる。司法解剖さえされていれば・・・。死因が究明されないことで長年苦しんでいるご遺族が本当に気の毒でたまらない。
こんなことがあってもいいのだろうか。でも、こんな事例は「木村事件」だけではない。見過ごされている殺人事件は他にもたくさんあるのだ。薬物を使った保険金殺人が発覚するのは、同じ人物が複数回殺人を犯してからであることが多い。これは解剖がされずに荼毘に付され、正確な死因が特定されないからだという。犯罪が増加していると言われ、少年法の改正だの厳罰化だのといわれているが、隠された犯罪を見抜く司法解剖のための予算は雀の涙のようなものらしい。どんなに隠しても必ず犯罪は発覚するということは、十分に犯罪を抑止する力になりえると思うのだが。