ブラッカムの爆撃機

ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの

ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの

イギリスの作家ロバート・ウェストールの作品集。大戦下の少年たちの友情と恐怖を描く「ブラッカムの爆撃機」の他、「チャス・マッギルの幽霊」「ぼくを作ったもの」の2編に、リンディ・マッキネルによる「ロバート・ウェストールの生涯」と宮崎駿のカラー書き下ろし「タインマスへの旅」を収録。

普段なら、まず手に取らない本だと思う(今回は翻訳者の金原瑞人さんの講演会に行ったのがきっかけで手に取った)。だって、タイトルに「爆撃機」。しかも、これが児童書だというんだから驚き。児童書に「爆撃機」。このタイトルでこの本を手に取る子供って、特に日本には少ないんじゃないかな。内容もわりと難しい。本を読みなれた、小学校高学年から中学生くらいの男の子になら薦められるかな。なじみのないものと舞台がでてくるから想像力もいるし、戦争の現実を受け止めるだけの力もいると思うから。でも、ぜひ読んでもらいたいと思う。戦争の現実と人間の心の奥深さを感じ取ったのちに、ほのかな明るさをたたえた読後感が味わえると思う。
今回は復刊するにあたって、宮崎駿さんがイラストとマンガを書いているので、それがとても読書の助けになる。このマンガも宮崎さんのウェストールへの想いがとてもよく表現されていて、素晴らしい作品になっている。「チャス・マッギルの幽霊」はちょっと素敵なお話。もちろんそこにも戦争の現実は描かれているのだけど。「ぼくを作ったもの」もいい。
ただ、女性の私が読んでも楽しめたけど、この本に強い魅力を感じるのはやっぱり少年なのではないかなと思う。もしくは少年だったことがある人。こういう本を一緒にで読んで盛り上がれる父親と息子ってのも素敵だなと羨ましくなってしまうほど、少年のための物語だ。