単身者たち

単身者たち

単身者たち

傷を負った中年の男女の出会いと不即不離の関係を通して現代の生の特異な在り様を描く。「単身者たち(第100回芥川賞候補作)」「白い部屋(第96回芥川賞候補作)」「夫婦」「卒業展」収録。

この人の本を読むのは「体温」に続き2冊目。こちらもしみじみと良かった。ただ、好みとしては「体温」のほうかな。「単身者たち」は、何か大切なものが欠けていてその隙間を埋めることが出来ない、もしくは埋め方がいびつである人々が、自らの寂しさを抱えてつつも生きていかなくてはならない現実を描いている。それは人間の根本的な寂しさでもあって、読者の私も寂しくなってしまう。同じような状態でも、ほんのりあかるさとあたたかさを感じるのが「体温」のほう。寒い季節に読んだから「体温」のほうが心に沁みるのかもしれませんが。