未来のきみが待つ場所へ
- 作者: 宮本延春
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/12/16
- メディア: 単行本
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著者は小中学校といじめを繰り返され、成績はオール1のおちこぼれ。家庭内の不和と貧困に苦しんで自殺も図った。そして10代で両親と死別、天涯孤独の身になる。そこからある出会いをきっかけに大学、大学院へ進み、教師となる。こういう自叙伝のような本を読むと、「結果よければすべてよし」だよね、成功しちゃったらそりゃなんでも言えちゃうよね、とひねくれものの私は思ってしまうのだけれど、この本にはそう思わせるものがない。語り口が淡々としているからかもしれない。その分、苦労した数々の出来事があまり胸に迫ってこないという気もするのだけれど、その暑苦しさは今の若い世代には嫌われそうだし読んでくれなさそうだから、これくらいがいいのかもしれない。
伝わってこないと書いたけれど、実際にはその過程はすさまじいものだったのだろう。学校も教師も家庭ですら、著者の安息の地ではない。想像しただけで恐ろしい。そのなかで自分の心のよりどころを自分自身で見つけていく。自分のことをじっくり考える。自分の人生を投げない。著者のその強さに驚く。
その強さで切り開いた道は教師。いじめを絶対に許さず子供の可能性を心から信じる教師。きっとこの本を読んだ子供たちはこんな教師がいることを心強く思うだろう。そしてその生き様から未来に繋がる何かを見つけるだろう。それが今は小さくてなんだか良くわからなくてもいつかきっと芽を出すのだと信じることが出来ると思う。