ほしいあいたいすきいれて

ほしいあいたいすきいれて

こちらも「本が好き!」からいただいたものです。新潮社のR-18文学賞の大賞受賞作の「夏がおわる」と「ほしいあいたいすきいれて」の2作収録。

「夏がおわる」
不倫相手に自分の思いを素直に告げることが出来ず、寂しさをごまかすために好きでもない男とセックスをする環がセックスの神様に会うというお話。荒唐無稽なようだけど、わりとスタンダードな切ないお話。こういう男いるよね。女の子の真剣な気持ちを知っているはずなのに、のらりくらりと適当なことを言って真剣に向き合わない男。女の子もそれをわかっているのに、それを認めたくなくて離れたくなくて、受け入れてしまう。恋愛って厄介。というような、若かりし頃の切ない気持ちを思い出しました。ま、そこだけだと普通なんだけど、セックスの神様っていうのがちょっと面白い。もうちょっとはじけたほうが面白かったかも。


「ほしいあいたいすきいれて」
これはタイトルがいいなぁ。なかなかつけられないよね、こんな露骨なタイトル。こちらは絵に描いたよな馬鹿男に振り回されちゃうちょっとお馬鹿な女の子、純が主人公。お馬鹿だけど、実はそんなに救いようのない馬鹿ではないのだ、この子。身内から性的虐待を受けている小学生の女の子、亜咲と出会って、なんとなくだけど放っておけなくなって心ならずも奮闘しちゃう。そこらあたりは頭の回転も早くて機転も利く。ただ、いままでそんな風に一生懸命考えることをしなかっただけ。自己評価が低いから、自分に対して一生懸命になれなかっただけ。純も、そして亜咲も同じでお互いに出会うまでは心を許せる友達なんていなかったんだろう。その共通点をお互いが見出したから、なんとなく離れがたくなってしまったんだと思う。そうはいってもお互いが助け合って出来ることはほんの少し。だから状況はあまり変わらないんだけれど、心の支えというかよりどころみたいなものを見つけられたおかげで二人は変わっていくのだ。そんな物語の読後感はなんとなく明るくてよい。でも児童に対する性的虐待は絶対に絶対に許せない。物語の中だけでも鉄拳を!と思うけれど、現実に起きていることを考えたら、安易に鉄拳を下してハッピーエンドというのは偽善的過ぎるのかもしれないな。