我々はどこへ行くのか

我々はどこへ行くのか―あるドキュメンタリストからのメッセージ

我々はどこへ行くのか―あるドキュメンタリストからのメッセージ

「本が好き!」からの頂き物。これはすごい本だ。読んでよかった。小さな出版社から出た本は発行部数も少ないし、書店でもなかなか巡り合えない。「本が好き!」の献本がなかったら出版されていることも知らなかったと思う。この本に巡り合う機会を作ってもらって、「本が好き!」プロジェクトと径書房には感謝したいと思う。そして、ここでレビューを書くことで少しでもこの本を手に取る人が増えたらとても嬉しい。

この本は昭和の終わりからの20年ほどを「NHKスペシャル」のプロデューサーの番組作リという視点から見た著作。番組を作るということは一般の視聴者に伝わりやすくその事実から何かを感じ取ることが出来るようにしなくてはならない。そのための企画、取材。常に動いている時代のどこを切り取るのか、どのように見せるのか。「NHKスペシャル」がそれらのことをとことん考え抜いて真摯な番組作りをしていたことが良くわかる。著者の目を通して激動の世界を追体験したような気持ち。なんだかんだ言っても、NHKだからこそできる番組作りなのではないかと思う。

著者は昭和の終わりからの激動の時代を軸に時系列に語っていく。昭和の終わり、ベルリンの壁崩壊、キューバ危機、9・11と細切れの事柄が積み重ねられていく。一見バラバラの事象に見えるけれど、それらは本当は複雑に絡み合っている。同じように番組の中ではひとつの事象として取り上げられていたものが、この著書の中で繋がっていく。無知な私はこの本を読んではじめて知ったようなことがたくさんあった。細切れの事象の表面だけをなぞって理解しているつもりになっていたことがなんと多いことか!無知なことが心底恥ずかしいと思った。

「我々はどこへ行くのか」。それは誰にもわからないけれど、我々はその行く末を見つめていかなくてはならないと思う。無知でいてはいけない。それは人間としてとても恥ずかしいことなのだ。