本の運命

本の運命 (文春文庫)

本の運命 (文春文庫)

「読書の腕前」で積読の効用部分が引用されていた井上ひさし「本の運命」を読む。語り口調のとても読みやすい本。
薄いし、すぐに読み終わっちゃった。もうちょっと読んでいたかったな。


野球や映画にのめりこんだ少年時代から少しずつ本のほうへ引き寄せられていく井上青年。半端じゃなく映画も見ているし本も読んでいる。むさぼるように自分の中にそれらを取り込んでいくという経験をしているのが羨ましい。戦中戦後のものがない時代、もちろん本や映画もかぎられたものしか手に入らないのだけれど、だからこそ手に入ったものに一途に取り組めるというのことが、とても羨ましく感じる。今はいろんなものがあふれすぎていて、ひとつのものに向かうのには大変な集中力を要するんだよね。その中から本当に好きなもの、のめりこめるものを見つけるのは大変。のめりこめるものを見つけたときも、周りにそれを見守る余裕みたいなものもないような気がするなぁ・・・なんてことを考えた。そんなのは贅沢な悩みなんだろうけど。

井上式読書法も興味深い。私には真似できないけど、本にどんどん赤線を引いたり書き込みをしたり栞紐をつけたりしてとことん自分の本にしてしまうんだって。そうやって何度も何度も読み込んで一冊の本を自分のものにしていくのも素敵だ。私ももう少し一冊の本を自分のものに出来るような読み方をしていきたいな。