「こころ」大人になれなかった先生

『こころ』大人になれなかった先生 (理想の教室)

『こころ』大人になれなかった先生 (理想の教室)

石原千秋氏が高校生に読んでもらえるように書いたということで、とてもわかりやすい文章で読みやすかった。

これがすごく面白い。ミステリーを読んでるみたい。さっとひとよみふたよみしたくらいでは気がつかない細部にもきっちりと目を向けて、そこに隠された謎に迫っている。これが小説を読むということなのかぁ。

「私」は先生の死後どのような状況にいるのか。
「先生」の眼差しへのこだわり。
「静」は何を知っていたのか。

他の文豪の作品がどうなのかわからないけど、「こころ」という作品は心理描写、心理描写がとても細かいのに、結構穴があるというか、読者があれこれ思考をはさむことの出来るゆとりのようなもののある作品だなぁと思う。文豪の中でも漱石の研究本というのはとてもたくさんあるようだから、それは漱石の作品の特徴なのかしら。