フーセル(熱い男)と呼ばれるぜんそく持ちの青年が革命家になることはわかっていたけれど、知らずに見たとしても、この青年が何かを成し遂げる人物であろうことは伝わってくる。この若く聡明でまっすぐで不器用な澄んだ瞳のゲバラ像をガエル・ガルシア・ベルナルが演じている。旅を愛する心と冒険心だけで旅に出た若者が旅を通して変わっていく様子が少しずつ丁寧に書かれていてとても良い映画。もう一度観たい。

チェ・ゲバラ伝

チェ・ゲバラ伝

キューバ革命の成功まではテンポも良く読みやすかったけれど、チェがキューバを出てからのアフリカ、ボリビアでの闘いの部分は偽名等使われているのでちょっとわかりにくく読みにくかった。アフリカ、ボリビアでの闘いが失敗に終わったのには様々な理由があるとは思うけれど、革命が成功するということは本当にまれなことで、キューバ革命はチェとフィデルというタイプの違う天才革命家が組んだからこそ成功したのだろう。そして、チェがいまだに世界中の人々に慕われ続けるのは、権力も地位も家族も安全さえもなげうって、不利な戦いに身を投じ、若くして亡くなったからなのだろうと思った。
キューバのことについては報道されている程度のことしか知らず、その知識もアメリカの背後からのぞき見たことばかりなのだなとがく然とした。フィデル・カストロについても本も読んでみたいけど、意外に少ないみたい。

アイリス [DVD]

アイリス [DVD]

「アイリス」。ケイト・ウィンスレットが観たくて買っておいた積みDVDw。
アイリスの若い時を演じるケイトも良かったけど、現在のアイリスを演じるジュディ・ディンチがすごかった!アルツハイマー病を発症して症状が進行していく様を、とてつもなくリアルに演じている。 「英国で最高」と言われるほどの知的でユーモアのある魅力的な女性がどんどん言葉と表情をなくしていく。 それを支える夫のジョン。 きれい事では済まない、葛藤に満ちた日々。 それでも愛することをやめないジョン。そんなジョンを演じるジム・ブロードべンドもまたすごい。
現在を描くかたわら、ジョンの回想として、アイリスに迫ってくる幻として、若かった二人が描かれる。ケイトとヒュー・ボナヴィル演じる若い時の二人が生き生きと輝くほど、失われたものの大きさが観ているものに伝わってくる。
素晴らしかったけれど、一度観ただけでは理解しきれないかも。アルツハイマーという病気の恐ろしさ、失われるものの大きさ、介護をするものの葛藤は十分に伝わってくる。痛々しくて辛い。 でも、若い時の二人の愛、その先にある二人の愛は、演じた人たちのインタビューをきいて、一つ一つの場面を反芻して初めて気が付くというか、そこに初めて思いが至ったというか。

でもこれは映画慣れしていない私のせいかも。文章を読むと、自分のペースで思いを馳せながら、解釈しながら読んでいけるけど、映像を見るとペースは決められているし、ストーリーは追わなくちゃいけないし、なので、本当に伝えたいテーマにたどりつく余裕がないのかもしれない。 それでも、観たあとに、これだけの余韻を残し、作品のテーマに思いを馳せる時間をくれるこの作品は素晴らしいのだと思う。

しかし、ケイトはやっぱり素晴らしい女優だなぁ。スクリーンの上が最も輝いて見えるもの。

あと、現在のジョンと若い時のジョンを演じたジム・ブロードべンドとヒュー・ボナヴィルはそっくりだと思ったけど、特典映像を見るとちっとも似てなくて驚いたよ!

ひとつめは「ジェイン・オースティンの読書会」。原作を読んだので、観てみたいと思っていた映画。
ユーモアのあるキュートな映画になっていて、好感度高い。 原作ではもっとオースティンの作品と登場人物の人生のシンクロ具合が強かったんだけど、映画ではオースティンの小説の魔法でみんながhappyになるって感じ。 いい意味の軽さがあって、観終わってなにか温かい気持ちというか、肩の力が抜けて頬が緩んでいる感じになった。 「読書会」なんだから当たり前だけど、本を読むシーンがたくさんあるのが嬉しい。
かたくなな少女のようなプルーディを演じているエミリー・ブランドが光っていたなぁ。 その夫役の俳優さんのルックスは私好みw。なのに、名前がわかんない。

ちょっと古びたものが好き

まず写真がいい。「ちょっと古びたもの」のまとっている年月という空気も写しとったような写真。それから、骨董としての価値がどうのというより、こまめに古道具のお店に足を運び、自分の気に入った物をひとつづつ手に入れる。そしてそれらを飾るわけでなく、日常で大切に使う。そんな岸本さんの暮らしぶりが素敵。こんな風にお気に入りのものに囲まれて、それらが持つ歴史や思い出に思いをはせながら暮らしてみたい。

19歳 一家四人惨殺犯の告白

19歳 一家四人惨殺犯の告白 (角川文庫)

19歳 一家四人惨殺犯の告白 (角川文庫)

フィクションぽいノンフィクションだと感じた。淡々と事実だけを積み上げていくタイプのノンフィクションにするには情報量が足りないのだろう。それは、著者が、自分の見たいものしか見ていなかったからかなと思う。暴力と貧困の中に育った冷酷な殺人犯が接していくうちに悔い改める、というようなストーリーを期待していたけれど、犯人は著者に対して、そういった態度を示さない。だから結局、理解不可能なモンスターだったと結論付けるしかなかったという感じがした。著者はこのあと、この事件を題材にフィクションを書いているらしい。そちらが著者の見たかった事件の真実なのだろうと思う。


本書の中であげられていた本の中で読みたいと思ったもの。

犯人が救いを求めたエホバの証人についてのルポ。
説得―エホバの証人と輸血拒否事件 (講談社文庫) 

死刑囚の生活と心理が描かれている小説。
宣告 上 (新潮文庫)宣告 中 (新潮文庫)宣告 下 (新潮文庫)

殺人現場を歩く2

殺人現場を歩く2 undercurrent

殺人現場を歩く2 undercurrent

1に比べると取り上げられている事件の印象が薄いものが多い。その印象とは反対に、犯行の動機等が部外者には全く理解できなかったり非常に短絡的だったりというような、得体の知れない不気味さを感じた。未知のものに対する恐怖なのかな。マスコミ的には「闇が深い」とでも表現するのかな。

この本の著者と写真家の見ている風景はとても近い感じがする。文章と写真のコラボレーションにもいろいろなタイプがあると思うけど、これは二人がとても近いものの見方をしている感じがする。それは二人が本質的に似ているのか、意図的に近づけているのか分からないんだけど、写真と文章の間に齟齬がない感じがした。